世界遺産タイル|シルクロード・ウズベキスタン陶芸ギャラリー

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ペルシア建築の装飾タイル
7世紀中期から始まったペルシア陶器の歴史は、それと平行するように装飾タイルを使ったイスラム建築を発展させました。装飾タイルもまたメソポタミア地方とウズベキスタン地方を含むペルシアの政治文化圏にあったものが「ペルシア・タイル」であり、広義的な意味で「イスラム・タイル」と呼ばれています。その歴史の道程は、日干し煉瓦から焼成煉瓦への技術的革新があり、そこに浮き彫りが施され、施釉されるようになります。各地域の陶郷で数々の技法が生まれましたが、15世紀のティムール朝でペルシア・タイルの最高潮を迎えることになります。
《シール・ダール・マドラサ(サマルカンド) 16世紀》
焼成煉瓦から始まるペルシア・タイルの歴史
●ペルシア・タイルの歴史
前4000年 ■バビロニア人が焼成煉瓦を作る
前2000年 ■バビロニア人が施釉煉瓦を作る
前1000年 ■ペルシアで焼成煉瓦が作られる
8世紀 ■「ハザールバーフ」という装飾的煉瓦積み重ね技法が見られるようになる
9世紀 ■カシーシャで「ラスター彩タイル」が作られるようになる
12世紀 ■「彩釉ファイアンス・タイル」が壁面装飾に用いられるようになる
12世紀末 ■「ラスター彩タイル」を用いた建築物が多く見られるようになる
14世紀 ■カシーシャから離れた地域で、「ファイアンス・モザイク」が作られるようになる
17世紀 ■「ハフトランギー・タイル」が作られる
紀元前4000年のバビロニア人は、焼成煉瓦を利用していました。ペルシアでは、紀元前1000年の焼成煉瓦の窯が発見されています。7世紀中期のイスラム文化の開花から、装飾性豊かなペルシア建築が建てられるようになったのは、セルジューク朝の10世紀〜12世紀にかけてです。これ以後、ペルシア建築の特徴を示す装飾タイルの技法が数世紀にわたってイスラム世界に広がってゆくことになりました。

初期ペルシア建築で用いられた装飾技法に「ハザールバーフ(千の交織り)」というのがあります。焼成煉瓦を装飾的に積み重ねてゆく技法で、壁面にコントラストを作り、文字などの絵柄を浮かび上がらせる効果がありました。これらはすでに8世紀のペルシアでは使われていました。11世紀のセルジューク朝の頃には、漆喰の断ぎ材に浮き彫りが見られるようになります。その後、煉瓦と煉瓦の間に嵌め込む埋木にも浮き彫りが加えられ、最終的には漆喰の壁一面に浮き彫りの装飾が施されるようになりました。
次の発展の段階は、施釉(彩色)煉瓦による壁面装飾です。ファイアンス(珪砂や粉末にした珪砂の胎土に釉を施したもの)製のタイルが、厳密な幾何学文様を作って、煉瓦の間に嵌め込まれました。施釉煉瓦の起源はバビロニア人まで遡り、紀元前2000年には用いられていたといいます。
《アフラシアブ(サマルカンド) 11〜13世紀》
「彩釉ファイアンス・タイル」がペルシアで本格的に用いられるようになったのは、12世紀からです。煉瓦の壁面にトルコ・ブルー、コバルト・ブルー、クリーム色の彩釉ファイアンス・タイルが装飾のワンポイントに使われ、図柄は、組格子文様・雷文・多角形文様など、いわゆる幾何学文様が描かれました。

12世紀末になって、ペルシアに新しい壁面装飾が登場することになります。それが、ペルシア陶器の上でも一大潮流となった技法で、金属のようにきらきらと輝く「ラスター彩タイル」です。これはすでに9世紀からありましたが、ペルシア陶器の中心地カーシーシャから中近東の国々まで広がり、14世紀の中期まで生産されました。ラスター彩タイルの特徴は、十字形もしくは星形をしているものと、レリーフが施されたパネル形のものがあり、その多くはモスクの中の最も重要な祈りの壁(ミフラーブ)に使われました。
《アフラシアブ(サマルカンド) 11〜13世紀》

一方、14世紀までは「ファイアンス・モザイク」という別の技法も登場することになります。これは、カーシーシャで生産されていたラスター彩タイルに比べて、各地域の陶工でも材料調達から製作まで容易で、失敗が少ないという利点がありました。ファイアンス・モザイクは東ペルシアで発達し、現在のアフガニスタンのへラートやティムール朝の首都サマルカンドの建築群で多く用いられます。

唐草文タイル 《ホージェント(タジキスタン) 15世紀》

アッバース1世が君臨してからの17世紀以降は、ファイアンス・モザイクに代わって、「ハフトランギー(七彩)」というタイルが主流となります。ペルシア陶器では、多彩色釉の技法が用いられましたが、これと同じくタイルに細密画を施すなどして、多彩色のタイルが作られました。


「ハフトランギー・タイル」は、18世紀〜19世紀になって衰えましたが、ウズベキスタン陶器の歴史の上では、各地域に施釉陶芸の流派が形成され、陶芸文化の成熟期にあたります。つまり、ペルシアタイルの伝統的な製陶術は、最後にウズベキスタンの地にとどまることになったのです。
 モザイクタイル《ビビ・ハヌム・モスク(サマルカンド) 15世紀》

【参考図書】ハンス・E・ヴルフ著『ペルシアの伝統技術』(平凡社)
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